めざせ!特許で一攫千金
誰も言わなかった?特許書類の書き方
リンクフリーです!

フリーエリア

ブログ内検索

プロフィール

めざ特

Author:めざ特
某大学を卒業後、超有名メーカーに就職。
数年後、某特許事務所に転職。
10年以上、特許明細書、意見書などの作成業務に従事した後、退所。
現在に至る。

当ブログはリンクフリーです。

最近の記事

最近のトラックバック

最近のコメント

月別アーカイブ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

コーヒーブレイク2
 久しぶりに、今まで使ってきた主な用語について説明しよう。


審査請求
  正確には「出願審査の請求」。出願するだけでは特許庁は審査をしてくれない。「審査をしてくれ」と言う必要がある。これが審査請求だ。審査請求をしなければ、発明を権利化することはできない。所定の手数料を添えて出願から3年以内に行なう必要がある。出願人以外の人も行なうことができるが、これをすると、自分の特許出願に特別な関心を抱いている者がいることを、出願人に知らせることになるので注意が必要。例えば、その人が審査請求しなければ、出願人も審査請求を見送り、権利化されなかったかもしれないのに、したばかりに権利化されてしまったという事態がおきるかも。

審査官
  特許庁の審査部に所属して、特許出願などの審査をしてくれる人。ただし、本ブログでは、「明らかに審判官の仕事だ」と分かるものを除き、審判官のことも審査官と書いている。これは案件をぼやかすためと、私自身のうっかりミスを減少させるためだ。同様の理由で審理も「審査」と書いている。だからといって、当ブログに書いている戦略の価値が低下するものではないので、ご安心を。


新規事項
 出願時の【特許請求の範囲】、【発明の詳細な説明】、【図面】に記載されていない事項。ニューマターともいう。新規事項を追加する補正をすると、拒絶理由になる。「後出しジャンケンはダメ」と言うわけだ。だから出願前に、請求の範囲や詳細な説明をしっかり書いておくことが重要だ。


構成要件
 請求項に記載されている発明を構築するのに必要なもの。発明の特定事項とも言う。例えば、
【請求項1】 Aと、Bと、Cとを備えたことを特徴とするX装置。
という発明があった場合、A、B、Cが構成要件だ。「これらの一つでも欠けると、私の発明は構成できない」という意味だから、構成要件が多いほど請求の範囲は狭くなる。狭くなれば抜け道も多くなる。構成要件を削除すると「新規事項の追加」とみなされる場合もあるので注意が必要だ。


(発明の)効果
 従来の技術に比べて、その発明が持っている有利な点。発明の進歩性を確保するためには大変重要。「有利」といっても、主観的な利点ではダメ。例えば、美しいとか、特許法第92条第1項(第3項)の通常実施権を得られるというのはダメ。美しいと思っているのは発明者だけかもしれない。92条の実施権を得てウレシイのは本発明の出願人だけ。こうした独りよがりの利点は認められない。
 また抽象的な効果も困る。上記した「美しい」もそうだし、大もうけできる、高度な処理を実現できる(何をもって「高度」というのか)もダメ。


スポンサーサイト
なんですと?
審査官はときどき変な発言をする。その例を幾つか挙げよう。

特許請求の範囲が広すぎる

 当ブログを読んでくださった方ならお分かりだろうが、こんな拒絶理由はない。あえて言うなら「請求の範囲の記載が不明りょう」とか、「新規性がない」だろうか。だが、新規性があるなら、「広すぎる」とは言えないだろう。そんなに広く書いても尚、新規性があるということは、発明者が独創的な発想をしたということであり、発明者の栄誉である。こんなことを言ってくるのは、次の発言と関連があるのかもしれない。

この発明を登録すると、他社が不利になる

 これは殆ど当たり前ではなかろうか。それとも、他社にまったく影響を与えない発明でないと特許できないとでも言うのか。だったら出願する意味がない。他社に真似されるのを防ぐために、ノウハウを公開する危険を冒して出願しているのだ。

擬人法を使うな

 これも理解に苦しむ指摘だ。なぜなら特許明細書には【発明が解決しようとする課題】という項目があるからだ。これは擬人法だ。擬人法を使わないなら「本発明によって解決される課題」とか「出願人が本発明により解決しようとする課題」とするべきだろう。確かに、擬人法により文章が分かりにくくなることはあるが、特許庁が擬人法を使っているのに、これを禁じるのはおかしい。

 幸い、これらを私が直接言われたことはないが、このような発言を見ると、「予断をもって審査をしているのでは?」という疑念がわく。特許したくないのに、有効な拒絶理由が見当たらなくて、ヒステリーを起こしているように見える審査官もいる。ここまでくると滑稽だ。審査基準を満たしているなら、特許査定すればいいのだ。審査・審理は虚心坦懐に願いたい。

要約書
 そういえば、今まで要約書について一言も書いてこなかった。要約書は、請求の範囲、明細書、願書と共に出願時に特許庁に提出する書類で、出願した発明の内容を要約したものだ。特許の成否には関係がないので今まで取り上げなかった。

 公開公報を早く見たい場合は、要約書を400字以内で書く必要がある。公開公報は出願から約1年半で発行されるのだが、400字を超えている場合は、特許庁が職権で要約書を作る(その場合、公開公報には要約に「修正あり」と明記される)。すると、その分だけ公開が遅れる。公開を早めるための制度として早期公開請求があるが、400字を超えている場合は、これも期待できないだろう。

 ところで、要約書の書式は、【要約】の下に【課題】と【解決手段】の2項目を書くことになっている。平成7年ごろまでは【目的】と【構成】の2項目だった。この古い書式では、【目的】に目的を、【構成】に構成をそのまま書く人がいた。「当然じゃないか」という人が多いと思うが、これでは、発明の概要が分からないことが多いのだ。なかには、【構成】に請求の範囲をコピペする人もいた。「詳しくは明細書を読んでくれ」ということだろうが、概要すら分からないのでは要約書の意味がない。目的はいいが、【構成】には「なぜその目的が達成できるか」を書くべきだ(とはいえ、【構成】に構成を書く程度では、職権による修正の対象にはならない)。

 【課題】と【解決手段】に書式が変わったとき、「特許庁もたまにはいい改正をするなァ」と思った。私が特許事務所に勤めるようになってから、審査に都合のいい改正ばかりしていたような気がしていたからだ。この書式なら、【課題】に課題を書き、【解決手段】に、その課題を解決する手段を書くことになるから、発明の概要がよく分かる要約書になる筈だ。

 この改正が行なわれた後、特許庁が「要約書の書き方」をテーマにした講習を行なった。私は参加できなかったのだが、同僚が持ち帰ったそのテキストを見て驚いた。【課題】の欄には「目的を書け」と書いてあったからだ。ときどき、明細書に「本発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、○○することを目的とする」と書く人がいるが、その通りだと思う。課題は解決するもので、目的は達成するものだ。 要約書に「目的」を書かせたいなら【目的】はそのままにして【構成】を【達成手段】にすればいいのだ。それとも特許庁は「課題」を「目的」の同義語か外延と思っているのだろうか。

[READ MORE...]
反論の難易度
 これまでのまとめを兼ねて、今回は、拒絶理由通知に対する反論のしやすさを、今まで紹介した拒絶理由ごとに見てみよう。ただし、拒絶理由を解消することが主眼で、戦略とか商品との整合性とかは問題にしないものとする。(拒絶理由を解消するために請求の範囲を狭めたら、自社の製品そのものになることがある。ライバル社の商品をそのまま商品化する会社は無いから、これでは戦略上の意味が薄れる。また、補正の結果、自社製品とは全く異なる物になることもあり得る)

反論のしやすさ
 1.(請求項の削除)
 2.記載不備・誤記の訂正
 3.記載不備・請求の範囲の記載が不適切
 4.記載不備・当業者が実施できる程度に書かれていない
 5.不適法な補正
 6.先願あり 新規性なし
 7.進歩性なし

 いきなりカッコつきの「請求項の削除」が来てしまったが、一部の請求項にのみ拒絶理由が通知された場合は、拒絶理由が何であるかに関わらず、その請求項を削除すれば拒絶理由は解消する。だから、意見書の作成は簡単だ。

 「誤記の訂正」も簡単だ。拒絶査定後でもできるし、(まず、ないと思うが)必要とあらば特許権が消滅した後でも可能だ。

 3~6の順位は異論があるかもしれない。「不適法な補正」も前回紹介した私が受けたような認定なら、反論はぐーんと難しくなる。だが通常はこんな順序になると思う。
 「先願あり」「新規性なし」の反論も難しくない。基本的に、示された先願や引用文献の違いを述べるだけでよい。だが、特有の効果があることも述べること(つまり「進歩性なし」と同様の反論をすること)をお勧めする。そうすれば形骸的にだけでなく本質的にも異なるものだということをアピールできる。

 やはり「進歩性なし」は難しい。「面白そうだから発明しました」「何の役に立つのか分からないけれどこんなモノができました」という出願では難しいだろう。既存の発明を寄せ集めたに過ぎないものも難しい。発明の段階から進歩性を指向することが重要だ。
 
 
[READ MORE...]
構成要件の削除2
 前回のように構成要件を削除した場合に、審査・審理が複雑化するとすれば、次のようなケースだろうか。

【請求項1】 Aと、Bと、Cとを備えたことを特徴とするX装置。

に対して審査官が「A、Bはいずれも引用文献に記載がある。これにCを設けることは当業者なら容易だ」として進歩性なしを通知したところ、出願人は「Bが引用文献にあるというのは審査官の誤解だ。AとBだけでも効果はあるから、Cは削除しよう。どうせ、Cを設けることは容易と認定されているし。」と考え、下のように補正したケースだ。

 【請求項1】 Aと、Bとを備えたことを特徴とするX装置。

 この場合は、サーチ対象からCを外して再度サーチが必要かもしれない。だがこれは、(出願人が言うことが正しいなら)「Bが引用文献に記載がある」とした審査官のミスだ。作業が複雑化するのは、自業自得なので甘受すべきだ。

(※削除する側の注意として、Cが請求項から抜けた結果、AとBをズバリ備えた引用文献がヒットする可能性もある。覚悟しておこう。)

 ところで、私は「最後の拒絶理由通知」や拒絶査定を受ける前の段階で行なった構成要件の削除を拒絶されたことがある。構成要件は上記請求項よりもたくさんあって、削除した構成要件も多かった。代わりの構成要件を【発明の詳細な説明】から追加したところ「シフトのさせ過ぎだ」という認定を受けた。

 「構成要件を2個削除するのはOKだが3個以上はダメ」などという運用基準はない。おかしいではないか。本出願においてはシフトを諦めて登録を受け、分割出願をして粘り倒して、ようやく認めさせた。

 くどいが、もう一度言おう。


請求の範囲は広く書くべし。
 
構成要件の削除
 「最後の拒絶理由通知」や拒絶査定を受けた後には、構成要件の削除はできない。例えば、

【請求項1】 Aと、Bと、Cとを備えたことを特徴とするX装置。

の構成要件はA、B,Cだが、これらの内の幾つかを削除することはできない。

 私は拒絶査定などを受けた後であっても、構成要件の削除は認めるべきだと思う。禁止する理由としてよく言われるのは、審査・審理が複雑になるというものだ。具体的には引用文献のサーチであろう。だが私はこれに納得がいかない。

 例えば、上記請求項1において、拒絶理由通知を受けた後に、構成要件Cを削除したくなったとしよう。拒絶理由は「進歩性なし」のみで、進歩性を確保するために、【発明の詳細な説明】からDを新たに追加したいが、そうすると、構成要件Cは不要になるというケースだ。

 Cを削除せずにDを追加して

(新1)【請求項1】 Aと、Bと、Cと、Dとを備えたことを特徴とするX装置。

 と補正したとする。Dは設計変更程度のものではないよしよう。すると、審査官は、Dを備えた引用文献をサーチするであろう。Dが見つかれば、進歩性はないままで拒絶査定。Dが見つからなくて且つ新たな拒絶理由が見当たらなければ特許査定だ。

 一方、Cを削除してDを追加して

(新2)【請求項1】 Aと、Bと、とを備えたことを特徴とするX装置。

 とした場合を考えよう。この場合も審査官は、Dを備えた引用文献をサーチする。Cがなくなったからといって別段、先の例と異なるサーチをする必要はない。Dが見つかれば、進歩性はないままで拒絶査定。Dが見つからなくて新たな拒絶理由も発生してないなら特許査定だ。

 つまりCの削除を認めても何ら作業は複雑化しないし査定にも影響はない。だから、構成要件の削除は認めるべきだ。

出願人がこうした補正を繰り返さないか心配だ

「最後の拒絶理由通知」に対して出願人がこうした補正を行なった後、サーチでDが見つかったなら拒絶査定にすればよい。拒絶査定の不服審判で出願人が再度こうした補正を行なった後、サーチで見つかったなら拒絶の審決を下せばよい。だから高々2回だ。構成要件の削除を認めていない現状においても、この程度のサーチはするであろう。だから心配は要らない。

[READ MORE...]
わざわざ面倒な事を・・・
 前回、「補正をしたときには、その根拠を意見書に書くべきだ」と言った。しかし、拒絶理由が来なくても、クライアントの希望で補正をする場合がある。こうした補正は自発補正と言われる。この場合は当然、意見書は出さない。

 ある件で、自発の手続補正書を送り、審査請求を行なったところ、補正の一つが「新規事項の追加」と認定された。復習しておくと、新規事項の追加とは、「出願時の請求の範囲や明細書に記載のない事項を、補正により追加した」という拒絶理由だ。

 だが、その補正は、明細書のある箇所からコピー&ペーストしたものだった。

 拒絶理由通知によると、「明細書の【00**】にある~~なる記載からこの記載は直接的かつ一義的に導き出されるものではないから新規事項の追加である」とのこと。「直接的かつ一義的に」というのは新規事項の追加か否かを判定するときに使われる判断基準だ。コピペをしたのに、なぜこんな認定を受けたのか。

 実は、審査官が指摘した箇所とは別の箇所からコピペしたのだ。審査官のいう「~~なる記載」は、確かに私がした補正事項とよく似ていた。これら両者が矛盾していれば、記載不備という別の拒絶理由になるが、この心配もなかった。完全な審査ミスだ。

 私がした補正がコピペであることは簡単に分かる。本発明の公開番号が分かれば、読者の皆さんでも次のようにすれば容易にできる。まず、特許庁のHPの電子図書館にアクセスする。本発明の公開公報を表示させ、更に【発明の詳細な説明】を表示させる。Ctrlキーを押しながらFを押し、開いたウィンドウに補正事項を入力して検索すればいい。見つかればコピペなので新規事項の追加ではない(可能性が高い)。このように、特許庁のHPとWindowsの標準機能だけでできる簡単な作業だ。おそらく特許庁にはもっと便利なツールがあるだろう。

 一方、補正事項によく似た記載を探すには、実際に明細書を読む必要があるだろう。これは上記手順よりも遥かに面倒だ。つまり審査官は、補正を「新規事項の追加」と決め付けて、補正事項によく似た箇所を明細書から探し出すというご苦労様な作業をわざわざ行い、見当ハズレな拒絶理由通知を送ってきたのだ。まったく何をやっているのやら。

[READ MORE...]
許される補正
 前々回、特許法第17条第2項に関することを書いたが、これに違反する補正をすると、拒絶理由になる。

 補正の基本は、出願時の請求の範囲・明細書・図面に書いた事項に基いて行うことだ。これらに記載のないことを補正により追加すると、上記の拒絶理由(新規事項の追加)が通知される。以前に示した拒絶理由では「不適法な補正」に相当する。

 記載のあることでも、請求の範囲を拡張する補正は注意が必要だ。「最後の拒絶理由通知」を受ける前には、請求の範囲を拡張する補正も許されるというが、私は拒絶された経験がある。それについて記そう。

 請求の範囲中のある用語に替えて、【発明の詳細な説明】にある用語をコピー&ペーストしたのだ。全く関連のない用語に替えたのではないし、ロジックをひっくり返した(「Aである」を「Aではない」にした等)訳でもない。

コピペしたのに、これがなぜ新規事項の追加なのか」と審査官に電話をしたところ、「出願時の請求の範囲よりも広くなっているから」という回答があった。発明は、請求の範囲だけではなく、【発明の詳細な説明】や図面によって規定される筈なのだがこの審査官にとっては請求の範囲で規定されるらしい。

 なお、このような対応をするのは、この審査官だけではない。「出願時に想定していない内容を新たに請求の範囲に含めるような補正は新規事項の追加だ」という認定はたびたび見かける。

 結局、その件は審査官の認定を受け入れることにした。幸い、狭くなるといっても大したことがないので、クライアントと話し合って「減縮してよし」とした。その他の反論も認められて登録された。

 やはり、請求の範囲を広く書くのは重要だ。「【発明の詳細な説明】に書いてあるから補正できる」と油断していると、こんな目にあう。また、拒絶理由通知を受けて補正をするときは、「明細書のどの部分を根拠とする補正か」を意見書に書くべきだ。さもないと、おっちょこちょいの審査官が「新規事項の追加」だと勘違いして拒絶理由を通知することがあるのだ。


ぶれる当業者像
前にも挙げたが、「進歩性なし」を規定する条文をもう一度しめそう。特許法第29条第2項

特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたものであるときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

前項の内容を知りたい方は進歩性とは(1)を見て欲しい。)

一方、記載不備としてしばしば通知される特許法第36条第4項第1号には、【発明の詳細な説明】は次のようなものでなければならないと書いてある。

経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載したものであること。

両条文には「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」という語が共通して使われている。これは、当業者と呼ばれるものだ。

 つまり「進歩性なし」とは、当業者が出願時において容易に発明をすることができたことであり、(36条第4項第1号違反の)記載不備は、当業者が実施可能な程度に【発明の詳細な説明】が書かれていないということだ。

 これら2つの拒絶理由が同時に通知されることがある。当業者が発明できるのに実施できないというのだ。これはどういうことか。

 納得できるケースは、「当業者が実施できないから、これは未完成発明である。この未完成発明を構成することは、提示した引用文献から容易にできる」というモノだ。

 しかしそうではない認定もある。単なる説明不足を記載不備と言ってくるケースがあるのだ。

説明が不足しているなら記載不備と言われても仕方ない

 という意見もあろう。だが、この説明不足は恐らく、明細書の作成者が「当業者なら全てを説明しなくても当然わかる」と思ったからだ。

 「当業者はおろか、小学生でも分かる」という図面や説明に対して、この記載不備を通知してきた例を私は知っている。「小学生でも」というのは誇張ではない。その図面や説明で分からない小学生がいたとしたら、その人は文明生活をおくっていない。電話もテレビも新聞すらない生活をしているのだろう。

 呆れたことに、こうした認定には一貫性がない。「この記載が不備だとすると、同様の記載をしている全ての特許は、無効理由を有していることになるが、それでいいのか?」と尋ねると「それはそれ、これはこれ」と平然と答える審査官がいるらしい。

 こんな審査のどこが公正なのか。アンパイヤがストライクゾーンを1球ごとに好き勝手に変えているようなものだ。幸い、私はコレを言われた経験がないが、言われたらキレるね。

 審査官は、「この発明は特許すべきではない」と思えば、進歩性なしを言うためには当業者を、どの引用文献にもない事項をもってきて課題を解決できる人物として扱い、記載不備を言うためには当業者を、小学生にも劣る人物として扱うのだ。気をつけよう。

 これらの対策は、既に第1部に書いた。進歩性を言うために効果(課題を解決できること)を強調しよう。記載不備を免かれるためには、(出願前にする必要があるが)しっかり説明しよう。他の文献を引用することも有効だ。

[READ MORE...]
補正すると思ったのに?
前回書いた「最後の拒絶理由通知」の説明が若干、言葉足らずだったので補足する。

 まず、「最後の拒絶理由通知」を受け取ると、補正がそれまで以上に厳しく制限される。だから出願人としては、できるだけこれを受け取りたくない。

 第2に「最後の拒絶理由通知」は、拒絶理由通知を受けて出願人がした補正が原因で、新たに発生した拒絶理由のみを通知するものだ。だから、前回の審査における審査官の見落としが原因で、今回通知することになった拒絶理由を含むものは、「最後の拒絶理由通知」とはならない。

 ところがこれには例外がある。審査官が次のような文言を付けて拒絶してくることがあるのだ。

是正することが特許法第17条の2の要件に違反しない程度であるため通知しなかった軽微な記載上の不備が補正されず依然として記載要件に関する拒絶の理由があり、その拒絶の理由のみを通知する拒絶理由通知である

 特許法第17条の2というのは、可能な補正を規定する条文だ。「どんな補正でも許される」なんてことはないのは常識的に分かるであろう。例えば、出願後に誰かが発明したものを、自分の請求の範囲や明細書に追加する補正は許されない。こうしたことが書いてあるのが特許法第17条の2だ。

 だから、上の文言は「記載不備があるが、これを解消する補正は適法な範囲内でできるから、『補正するだろうなあ』と思ったら補正しなかったから、この不備を通知する」ということだ。

 変ではないか? 「最初の審査で通知するに値しなかった不備を、次の審査の段階では通知する」と言っているのだ。初めてこの文言を見たときは「とうとう特許庁もヤキがまわったか」と笑ったものだが、やがて沸々と怒りがわいてきた。

 これは、「最後の拒絶理由通知を審査官が出したいときは、簡単に出せる」ようにするものだ。なぜなら、次のような作業が可能になってしまうのだ。すなわち、最初の審査のときに記載不備を発見しても、それを通知せず、進歩性なし等のその他の拒絶理由のみを通知する。出願人が、通知された拒絶理由のみを解消する補正をすると、記載不備が残る。これを通知する拒絶理由通知を、審査官は「最後の拒絶理由通知」として送付することができるのだ。

 もっと悪用ができる。通知した拒絶理由が意見書や手続補正書により解消された際に「この発明は特許査定したくない」と審査官が思えば、請求の範囲や明細書から記載不備を新たに探し出し、それをあたかも「最初の審査で発見した軽微な記載上の不備」であるかのように装って最後の拒絶理由通知を送付することができるのだ。

 記載不備か否かの明確な基準があればいいのだが、これはないに等しい。これについては次回。

[READ MORE...]
全請求項が進歩性なし?
 前回、請求項を1個しか書かない大企業があり、「これでは審査官が本発明を『どの程度まで狭めれば特許してもいい』と考えているかが分からない」といった。これがはっきりと意味を持つのは、審査官が一部の請求項のみに進歩性なしや先願ありの拒絶理由を通知した場合だ。

 ところが、私はこの経験があまりない。なぜなら審査官が全ての請求項に進歩性なしを通知してくるケースが多いからだ。確かに「提示された引用文献と比較すると、なるほど全ての請求項に進歩性がなさそうだ」と思える場合もあるが、例えば「請求項1は確かに進歩性がないかもしれない。しかし請求項2以降の発明は、どう考えても引用文献から容易に発明をすることはできんぞ!」という場合がかなりある。

 なぜ審査官はこんな通知をするのか。その理由は恐らくこうだ。審査官が、一部の請求項のみに拒絶理由を通知した場合に、こちらが補正をして、拒絶理由が通知されていない請求項のみを残したとする。審査官は「これでも進歩性がない」と思ったとしよう。審査官としては、いつまでも同じ案件に関わりあいたくない。そこで「最後の拒絶理由通知」や「拒絶査定の謄本」を送りたいところだが、このケースでは、どちらもできない。

「最後の拒絶理由通知」は、補正が原因となって新たに発生した拒絶理由を通知するものだ*。だが残された請求項は、実質的な補正を受けていないので、「最後の拒絶理由通知」を送付できない。

 一方、「拒絶査定の謄本」だが、これを送る際には、その前に拒絶理由通知を送ることが特許法第50条に規定されている。ところが、残された請求項は今まで一度も拒絶理由を通知されていないので、これも無理。

 この結果、審査官は通常の「拒絶理由通知」を再度おくる羽目になる。これは、ふりだしに戻るようなものなので審査官としては避けたい。

 そこで審査官は、一部の請求項にのみ進歩性がなさそうな場合でも、全ての請求項に「進歩性なし」を通知しておく。こうすれば、出願人がどの請求項を残そうが、いちおう拒絶理由は通知しているのだから、「拒絶査定の謄本」を送ることができるのだ。(単に、全ての請求項を審査するのが面倒くさいからなのかも知れないが・・・)

*これについては例外がある。次回で書こう。

[READ MORE...]
公開公報
 特許事務所にいると、他の特許事務所から特許出願された案件の公開公報を見る機会が多い。拒絶理由通知で審査官が引用文献として提示したり、クライアントが参考資料としてくれたりするのだ。

 そうして色々な人が作成した請求の範囲や明細書を見ていると、感心させられたり「なんだコレは?」と驚かされたりする。

 誰でも知っている大企業で(今はどうか不明だが)、請求項を1つしか書かせない会社がある。特許費用の削減が目的だと思うが、あまり感心しない。「広く書こう(5)」で書いたように、これでは審査官が本発明を「どの程度まで狭めれば特許してもいい」と考えているかが分からない。これで特許査定がもらえればいいが、それでも、権利範囲のとりはぐれが起きそうだ。

 また、【発明の実施の形態】の大半が、その発明に関係のないことが書いてある公報を見たこともある。「発明に関係があること」とは、その発明が解決しようとしている課題に関係のある事項のことだ。その発明が適用される製品が備えているというだけでは「発明に関係があること」とは言えない。

 そんなことをだらだら書いても、何ら登録の助けにならない。こうした記載で、請求の範囲を限定して特許査定が出たとしたら、もともと請求の範囲に書いてあった事項の分だけ狭い特許を取得したことになる。特許事務所がクライアントにページ数で費用を請求しているとしたら、大変な水増しだ。もっとも、クライアントの希望でそのように書いている可能性もあるので、一概に特許事務所を悪者にすることはできないが。

 最も仰天したのが、自ら新規性がないことを認めている公報だ。「どこの特許事務所だ」と思ったら代理人がいなかった。おそらく発明者が自分で書類を作成して出願したのだ。こんなことがあるから、出願は特許事務所に頼んだ方がいい。もっとも、そんな発明を依頼されても、新規性がないから「ばれませんように」と願いつつ出願することになるが。

一攫千金は可能か
 「めざせ!特許で一攫千金」なんて言って、本当に一獲千金なんて可能なのかという疑いもおありだろう。はっきり言おう。一穫千金は可能だ。

 私が中間手続(拒絶理由通知などを受けて意見書や手続補正書などを作成する業務)を担当した案件で、存在した。当ブログの「発明をしよう(2)」で紹介した分野のいずれかに属するソフトウェア発明だ。この発明は商品化されており、私もこの発明を利用しているし、皆さんの中にも使ったことがある人が多いはずだ。

 特許だから、それまで存在した問題点を解決している。代替品がないこともないのだが、この特許の方が遥かに便利だ。詳しいことは言えないのだが、私はこの発明により発生したロイヤリティの額を不正確ではあるが知り得る立場にあった。年間の実施料は数千万円で、権利期間を10年間としても数億円。「千金」どころか億万長者だ。

 実はこの発明者は、この実施料を受け取ることができなかった。なぜかというと、出願人ではなかったからだ。特許権は出願人のものだから、実施料も出願人に行ってしまった。

「では、やはり一攫千金は無理ということでは?」

 それは違う。この発明者が自ら出願人になれば良かったのだ。ソフトウェア発明は机の上で生み出すことが可能なものだ。勤務先の施設がなくとも発明できるのだ。この点が青色発光ダイオードとは異なる。

「職務発明なら仕方がないのでは?」

 詳しい理由は言えないが、この発明者がこの出願人の従業員ではなかった可能性が高い。私はこの発明者に会ったことがなく間接的な話すら聞いたことがないが、そう言えるのだ。勿体ないことをした。大富豪になれたかもしれないのに。出願費用が惜しかったのだろうか。

侵害していると言われたら
私が担当した案件ではないが、第1部のおさらいを兼ねてクイズを一つ。

(問)甲社の特許に酷似した商品を乙社が発売した。甲社の特許は、

【請求項1】 Aと、Bとを備えたことを特徴とするX装置。

というものだった。そこで甲社は乙社に警告書を送った。「貴社の商品が備えるaは当社の特許のAに相当する。同商品が備えるbは当社の特許のBに相当する。従って同商品は当社の特許を侵害している云々・・・」

これで乙社に生産の差し止めを要求するなり、損害賠償を請求するなりする訳だ。

 さて、乙社はどう反論するだろうか。

 素直に考えると、「当社の商品が備えるaは貴社の特許のAには該当しない。また、同商品が備えるbは貴社の特許のBに該当しない。従って当社は貴社の特許を侵害していない」と反論してきそうだ。理論的にはa,bの片方を否定すれば、甲社の特許の構成要件を備えていないことになるので、反論としては成立する。

 だが、乙社は次のようなことを言ってきた。
当社の商品は、貴社がその特許を出願する前から知られている技術しか用いていない

 何だろう、これは。甲社としては肩透かしをくったような気がするのではないか。「それがどうした」と言いたくなるかもしれない。実は、これは警告書を受け取った側がする常套句だ。これが警告書に対する反論になっているのだ。その理由は何だろうか。

ヒント:無効理由。(無効理由は拒絶理由と同じだと思って頂いて大丈夫。正確には異なるが、実用上、同じだと思って殆ど問題ない)

(答え)
  ↓
[READ MORE...]
異議申立2
 今回も異議申立について。どうせ挙げるのなら無効審判にすればいいのだが、残念ながら私は無効審判をしたことも受けたこともない。だが、私が異議申立において経験したことは、無効審判においても参考になるだろう。

 ある発明が拒絶理由通知を受けたときのことだが、拒絶理由を解消する補正のついでに、私はとある用語(Aとする)の上位概念化をしたかった。Aは「A以外の何物でもない」と言われても仕方ない用語だった。これでは登録されても権利範囲が狭くなってしまう。(言い逃れになるが、この明細書を書いたのは私ではない。当時、既に退職していた先輩が書いたものだ。先輩、なぜもっと広く書いてくれなかったんだ?)

 だが、上位概念化は危険な補正だ。そこで泣く泣くAをそのままにして、拒絶理由を解消する補正をして、意見書を書いた。その結果、登録されたのだが、私は残念な気持ちに包まれた。

 前置きが長くなった。その特許が異議申立を受けた際に、次のような経験をした。異議理由は、これまた「進歩性なし」。その中で、異議申立人は、用語Aを「引用文献に記載のあるBやCに相当する」と主張してきたのだ。

 この異議申立人が、この特許の抜け道を探してタダ乗りしようとしたとしよう。これには、構成要件を除けばよい。しかし上記のような異議申立をした以上、Aを除いてBやCにすることはできない。自ら「BやCはAに相当する」と言ってしまったのだから、これではAを除いたことにならない。

 この異議申立で特許を潰すのに失敗したら、B、C以外のものでAを代用するか、Aに相当するものを一切あきらめることになる。さもなければ、A以外の構成要件を除く必要がある。これは異議申立人がAを上位概念化してくれたようなものだ。

 だから、このときも私は大いに喜んだ。そして訂正+答弁書で特許も維持された。めでたしめでたし。

[READ MORE...]
異議申立1
 以前、異議申立という、無効審判によく似た手続きがあった。無効審判とは異なり、期限(特許掲載公報の発行の日から六月以内)があり、誰でもできる(当時の無効審判は利害関係者のみ)という特徴があった。当時も無効審判はあったから、一旦成立した特許を潰す手続きが2つもあった訳だ。

 ある日、私が担当し特許された案件が異議申立を受けた。異議理由は進歩性なし。拒絶理由通知の際に審査官が付けた引用文献に、更に別の引用文献を付けて異議を申し立ててきた。その内容を読んで、私は喜んだ。担当した特許が潰される危機にさらされているのに、なぜ喜んだのか。

 実は、私はこの特許には「未完成発明」の疑いがあると思っていた。発明の中で、とある信号処理を行なっているのだが、これが発明者の言うような信号を出力するかどうか怪しいと私は思ったのだ。ここで所望の信号が出力されないと、発明全体が疑わしくなってくる。特許査定が出たときには胸をなでおろしたものだ。

 このたび、これに加え、異議申立人が「この特許は、添付した引用文献から当業者が簡単に発明をすることができる」と言ってきたのだ。これは、この特許が未完成ではないことを認めたようなものだ。だから喜んだのだ。もし将来、誰かから「未完成発明」を理由とする無効審判を請求されても「完成していることを異議申立人が認めている」と反論することができるのだ。

 進歩性なしに対する反論はお手の物だ。しかも以前に意見書を作ったのは私なので、発明の内容は把握している。請求の範囲等の訂正をして、答弁書を提出したら、権利は維持された。

 異議申立は、もうなくなった制度だが、無効審判にも同様の注意が必要だろう。潰そう(せめて請求の範囲を狭めよう)と思って請求したら、その特許の弱点を一つ減らしてしまったということになりかねない。

[READ MORE...]
設計変更程度
「進歩性なし」の拒絶理由通知で、審査官が「引用文献との差は、設計変更程度のことだ」とか「適宜なし得ることだ」と言ってくることがある。「引用文献中に発見できなかった事項は、何でもかんでも設計変更程度と言っていないか?」と思うこともある。私が、明らかに設計変更程度だと思うのは、「配置を換えただけ」「向きを変えただけ」「数量を変えただけ」等だ。

 例えば、「従来のイスは脚が4本だった。私は脚を5本にした。」と言う発明だ。いくら「これにより脚1本あたりの圧力が減り、絨毯にあとが残りにくい」という効果があっても、これは設計変更程度の発明だ。脚が6本でも7本でも大差ない。

 ある日、私が受けた「進歩性なし」の拒絶理由通知は、設計変更程度とは書かれていなかったが、そう言われても仕方ない内容だった。発明は、回路構成に関するもので、引用文献(某発明の公開公報)では、2つある素子Aの一方のみに別の素子Bが接続されていた。本発明では、双方の素子Aに素子Bが接続されていた。

 これでは「素子Bの数や配置を変えただけ」と言われても仕方ない。「こりゃダメか」とさじを投げかけたが、もう一度、引用文献を読んでみた。

 「一方の素子Aのみに別の素子Bを接続」という態様は、引用文献の「従来技術」の欄に載っていた。つまり、この引用文献は、この技術の問題点を指摘し、その解決をしているのだ(その問題点は、本発明が解決しようとしているものとほぼ同じで、この引用文献では別の解決法を採用している)。その問題点の部分を読むと、「こうした回路構成ではこの問題点を解決できない」旨が記載されていた。

 本発明は「こうした回路構成」で上記問題点を解決をしたモノだ。この点をつけば、進歩性が認められるかもしれないと私は考えた。

 進歩性を確保するには「当業者がこの発明に想到するのが困難であった」ことを言えばいい。当ブログの第1部では「本発明の出願時には解決されていない課題を解決できることを主張せよ」と書いた。だが本件の場合、引用文献とほとんど同じ問題点を解決するものだから、これは無理っぽい。

 でも、もし引用文献に「(本発明に)当業者が想到するのが困難であった」と書いてあれば、これは本発明に進歩性がある証拠になるのではないか。「こうした回路構成ではこの問題点を解決できない」は、これに近い記載だ。

 この案に沿って意見書を作成したところ、主張が認められ、特許された。自分でも「設計変更程度」だと思う発明が登録されたわけだ。

[READ MORE...]
パクった発明のその後
前回の続き。

 審査請求の結果、ご多聞にもれず拒絶理由通知が届いた。案の定、「件の記事の発明」を先願とする「先願あり」が通知された。その他に、件の記事の会社とは別の会社の公開公報を2件つけた「進歩性なし」と、私のうっかりミスによる記載不備が通知された。拒絶理由が3つもあった訳だ。

 私は拒絶理由を解消するための補正を行い、意見書を提出して審査官に反論した。以前にも言ったが、記載不備の解消は、特許事務所から出願したものなので簡単だ。記事の発明を改良したということは、「先願あり」と言われるのを予見して対策したことになるから、これも反論は容易だ(対策していたのだから、本当はこの拒絶理由は来て欲しくなかったのだが)。

 しかし「進歩性なし」は苦労した。拒絶査定を受け、不服審判を請求し、やっとこさで登録にこぎつけた。いちおう私としては職務を果たした格好になった。


 ところで、件の記事の発明も特許出願していたが、これはどうなったのか。実は、この発明は登録に失敗している(パクッた方が登録に成功しているのに!)。 奇妙ではないか。私はオリジナルの方も、十分に登録に値する発明だったと思う。

 何が成否を分けたのか。包袋を取り寄せてないので、オリジナルが受けた拒絶理由などの詳しいことは分からないが、私は粘りだと思う。電子図書館の経過情報によれば、オリジナルも拒絶査定を受けている。これに対する不服審判の番号が載っていないので、拒絶査定を受けて諦めてしまったのだろう。

 もし、このオリジナルの企業が、自社の製品に改良を行なって、私の顧客の特許と同じになると、この特許権を侵害することになってしまうのだ! なんとも理不尽な話だ。

私は、

重要出願なら拒絶査定ていどで諦めるな

と言いたい。また、貴方が重要でないと考え、権利化を諦めても、その下位概念や上位概念を他社が権利化するかもしれない。粘って登録しておけば、実施権を受けることができるし、下位概念が商品化されればそこからロイヤリティをもらえるかもしれない。粘ろう。粘るのだ。

[READ MORE...]
依頼は発明のパクリ
今回から第2部。心機一転と言う訳でもないが、今回から「ですます調」をやめる。今回から取り上げるブログの内容と合わないし、正直いうと使い辛いのだ。それでは本題。

私がいた特許事務所の顧客の中には、発明をほぼ専業にするクライアントもいた。 ある日、その顧客が、某雑誌の記事を示して「これを出願して欲しい」と依頼してきた。

 いままで当ブログを読んでくれた方ならお分かりだと思うが、発明が雑誌に載った時点で新規性はなくなる。たとえその記事が顧客の製品に関するものであったとしてもだ。けしからんことに、この記事は他社のものだった。いわゆるパクリですな。

 発明を専業にしているのだから、特許の知識もそれなりに持っているはずなのに困ったものだ。私は、記事の発明をそのまま出願するのは良心が痛む。そこで、この客がずぼらなのをいいことに、請求の範囲を少し狭めて出願することにした(本ブログで「広く書こう」と書いたにもかかわらず!)。記事の発明そのものは、どの道、権利化できないのだ。

 ときどき「審査官に見つからなければいい」という人がいるが、誤りだ。確かに審査官は今回の「記事」を発見できないかもしれない。しかし、権利化を阻止したいとか特許を無効にしたいと思う利害関係者は、必死になって件の記事を探し出す。審査請求前に見つかれば、情報提供で審査官にチクる可能性もある。

 話を戻そう。私は当然、出願書類の内容について顧客の了解は得た。「狭めました」とは言わなかったが、言わなくても請求の範囲ぐらいは読むべきだ。因みにこの客、出願後に「請求の範囲が狭い」と苦情を言ってきた(ね、ずぼらでしょ?)。

 後日、件の記事の発明をした企業は、その発明を特許出願していることが判明した。これで、審査官が例の記事を知らなくても、その出願を先願とする拒絶理由などを本件に通知できる。「記事の発明を特許できなかったのは、請求の範囲を狭めためざ特のミスだ」と顧客から見当違いの非難を受ける心配も無くなった。安心安心。

 さて、本件の審査請求をし、その結果が出た。どうなったかは次回。

[READ MORE...]
これまでのまとめ
前回までで発明者が心しておいた方がいいことをほぼ網羅しました。
ここでまとめておきましょう。



進歩性を指向して発明をしよう

そのためには未解決の課題を解決しよう

  これだけで特許される確率がぐーんと高くなる。


請求の範囲は広く書こう

複数の請求項に分けて書こう

構成要件の外延を書こう

外延は、互いにかけ離れたものをたくさん書こう

構成要件と外延の対応関係は必ず書こう

不明瞭だと言われないようにしっかり説明しよう

説明が大変なら文献を引用しよう


  こうすれば請求の範囲や明細書が大幅にパワーアップする。


以上で本ブログの第1部を終了とします。

第2部では、私がこの仕事で遭遇した体験を幾つか紹介します。



実用新案2
現在、権利が存続している実用新案は、全て平成6年以降に出願され、前回説明した新・実用新案です。当ブログでは実用新案として出願するのをお勧めしませんが、あえて実用新案で出願するとすれば、どう活用したらいいのかについて説明します。

 まず第1に、言葉は悪いですが「おどし」として使う手があります。実用新案権が発生すれば、実用新案登録番号を得ることができます。発明を商品化したらこの登録番号をパッケージなどの目立つところに提示します。
 出願番号や公開番号とは違って、いちおう「登録番号」ですから、威圧感はあります。「これを見て、他者が実施を控えてくれれば儲けもの」という方針で実用新案を出願する訳です。このような方針ではないかもしれませんが、テレビCMで実用新案の登録番号をうたっている商品も実際にあります。

 第2に、特許出願と併用するという手があります。これには、まず普通に特許出願します。それから数日遅れで、同じ内容のものを実用新案として出願します。あとは第1の方法と同じです。第1の方法と異なるのは、実用新案権が10年後に消滅したころに、特許権が成立するのを狙うという点です。「特許権が成立する前の間、実用新案権で他社をけん制する」と言い換えてもいいでしょう。

 この実用新案の技術評価を請求すると、自ら行なった特許出願により「先願あり」になるので注意が必要です。これを防ぐために、特許出願の請求の範囲よりも、請求の範囲を狭めるという案もあります。なお、出願の順序を絶対に逆にしてはいけません。必ず特許出願が先です。さもないと実用新案のせいで特許権の取得が困難になる、という本末転倒の事態が発生しかねません。

 上記案は、いずれも、自らの出願を商品化して意味を成すものなので、当ブログではなじみません。

 第3に、とりあえず実用新案として出願しておいて、3年以内にこれに基いて特許出願するという手があります。ただし、この特許出願の権利化に失敗すると、出願から10年後まで実用新案として存続するはずだった権利がなくなってしまいます。

 ところで、実用新案の注意点として、初期費用が高くなりがちという点があります。権利期間が特許より短いので、特許庁に支払うトータルの費用は少なくなりそうです。その代わり、出願すれば必ず権利が発生するので、実用新案登録料(特許料に相当するもの)を出願時に払う必要があります。だから、出願時の費用は、特許出願の方が安い場合があるのです。


実用新案1
本ブログは特許が対象なのですが、少しだけ実用新案についても触れましょう。

 よく大発明が特許、小発明が実用新案と言われますが、そんなことはありません。実用新案は装置や、物の形状のみを保護対象としているので、そうではないもの、例えば製造方法の発明は、レベルの高低にかかわらず特許出願することになります。

(なお、特許が発明、実用新案が考案と言われますが、当ブログではどちらも「発明」と呼ぶことにします。発明も、物の形状や組み合わせに関するものであれば、実用新案として出願できるからです。注意するのはこの点と、出願書類の項目名くらいです。因みに特許法、実用新案法に規定されている発明と考案の違いは、高度であることが要求されるか否かです。発明は高度でないといけませんが、考案は高度であっても無くてもいいのです。高度か否かの判定法については規定がありません。
 だから、実用新案で出願しても、出願人が「このアイデアは高度だ」と思うのであれば、発明と呼んでいいのです。繰り返しになりますが、項目名はダメですよ。【考案の名称】【考案の詳細な説明】等と書かなければなりません。)

 また、実用新案は平成6年に大きく変わりました。権利期間が6年に短縮され(現在は10年に延長)、その代わりと言うわけでもないのですが、無審査で権利が発生するようになりました。

 特許権は特許庁の審査や審理をパスしないと発生しませんが、実用新案権は出願するだけで発生するのです。何か話がウマすぎませんか? やっぱり、こういう話には落とし穴があるんですね。それは、実用新案権は、それだけでは行使できないのです。選挙権は得たけれど投票ができないようなものです。

 ではどうすれば行使できるのか。それには、特許庁に技術評価の請求をして技術評価書を作成してもらいます。でもこの「技術評価の請求」というのは、実質的に特許の審査請求と同じです。だから特許と同様、進歩性や、先願がないこと、当業者が実施可能な程度に記載されていること等が要求され、さもないと、技術評価書の内容が悪くなり、権利行使に支障がでます。そんな実用新案で一攫千金を狙って、商品化を頼んでも、技術評価書の内容が悪ければ相手にされないでしょう。

[READ MORE...]
注意すべき誤記
誤記はいつでも補正(訂正)できると前回いいました。だから、例えば「確率」と書くべきところを「確立」と間違えても気にする必要はありません。それより1日でも早く出願しましょう。

とはいえ、注意すべき誤記もあります。

まず、構成要件の名称。請求の範囲で「記憶手段」と書いたら途中で「記録手段」になったり「格納手段」になってはいけません。書いた側にとっては単なる書き間違いでも、読む側からすると「記憶手段」の説明が不足するので不明瞭ということになります。

 次に請求項の引用ミス。これは拒絶に繋がるという注意ではなく、権利範囲が狭くなるおそれがあるという注意です。次のような請求の範囲があったとしましょう。

【請求項1】 Aと、Bとを備えたことを特徴とするX装置。
【請求項2】 Cを備えたことを特徴とする請求項1に記載のX装置。
【請求項3】 Dを備えたことを特徴とする請求項2に記載のX装置。

 Dを備えるときは必ずCも備えなければならないなら、これでいいのですが、そうではない場合、請求項3は「Dを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のX装置」と書かないと、狭くなる可能性があります。

 例えば上記請求の範囲に対し、「請求項1と請求項2に進歩性がない」という拒絶理由が通知されたとしましょう。つまり請求項3のDさえあれば進歩性を確保できることになります。
 構成要件が少ない方が権利範囲が広いので、この場合、「AとBとDを備えたことを特徴とするX装置。」という請求項が欲しくなります(AとBは共に必要不可欠とします)。ところが、請求項3が請求項1を引用していないので、補正でこの請求項を作り出すことはできません。この結果、「AとBとCとDを備えたことを特徴とするX装置。」という、不要なCを構成要件とする請求の範囲で我慢する羽目になります。

 なお、請求項の引用ミスは、「引用できないものを引用した」という拒絶理由を生む場合も有ります。例えば、上記例の逆で、Dを備えるときは必ずCも備えなければならないのに、「Dを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のX装置」と書いた場合です。この拒絶理由は補正で解消できるので心配は不要です。

補正
 今までにも何度か言ってきましたが、補正には、できるものとできないものがあります。これを大まかに言うと次のようになります。

・請求の範囲を広くすることはできない

・出願時に記載されていなかったことは追加でき

ない

・段階が進むにつれ、補正(訂正)は難しくなる


 「段階」としては、最初の拒絶理由通知をもらうまで(及びもらったとき)、「最後の拒絶理由通知」をもらったとき、拒絶査定や無効審判を受けたときが挙げられます。
 ただし補正の難易度は実質2段階で、それは「最後の拒絶理由通知」をもらう前か後かで分かれます。また「最後の拒絶理由通知」が来なかった場合(拒絶査定のとき)には拒絶査定の前で分かれます。
 
 いずれにせよ、上記の理由により、出願時に請求の範囲は十分、広く書いておくことや、補正により進歩性を確保するために改良案をいくつか挙げておくことが重要です。

 ところで、段階にかかわらず、いつでも可能な補正(訂正)があります。それは、

・請求の範囲の減縮
・誤記の訂正
・明りょうでない記載の釈明

です。これらは、拒絶査定を受けたときもできるし、必要と有らば特許として登録された後でも可能です。
 ここで、「誤記の訂正」も可能である点に注目してください。請求の範囲や明細書に、誤字や誤記がないよう、細心の注意を払う人がいますが、実は、誤記が致命傷になることは少ないのです。何しろ、いつでも補正できるのですから。

 当ブログを読んでくれている方に、こんな人はいないでしょうが、

「補正などしなくても登録されるように書くべきだ」

という意見が未だにあるかもしれません。そうした人は9/15の記事や9/16の記事を読んでください。
 
独占したい場合
自分の特許を商品化しない方がいい理由が出揃いましたので、まとめましょう。

理由1.特許を商品化すると、他社の特許を侵害

する場合がある

理由2.特許を取得しても、独占できるとは限ら

ない

理由3.商品化や販売は、他社の方がうまい可能

性が高い


 理由3について補足します。自分で商品化すると、広告や製造のノウハウ(アウトソーシングを含む)が必要だし、販路の開発も大変です。
 これに対し、他社(特に大手)が商品化してくれれば、広告や製造はお手の物だし、販路も既にあるでしょう。その商品が他社の特許の侵害に当っても、そうしたことにも慣れているので交渉もスムーズに行くでしょう。

 それでも商品化をしたい場合は、理由2の対策、すなわち独占できるような努力が新たに必要になります。安易な改良品に進歩性が認められないように、改良案を多数、書いておきます。出願後に改良案を思いついた場合は新たにそれを出願したり、1年以内に思いついたのであれば国内優先出願も検討します。特許を取得できそうな下位概念の公開公報を発見したら、情報提供をして、後願が特許を取得しないよう、ありとあらゆる努力をします。はっきり言ってしんどいです。

 因みに、理由1の対策、すなわち商品が他社の特許の侵害に当らないようにするのは難しいです。これには、先願を徹底的に調べて、その構成要件を適宜はずしたものや既に権利が消滅した技術と、自ら開発した構成のみで発明を構築することになります。これは非常に難しいし、時間も資金も必要です。発明の母は「必要」のはずなのに「不侵害」が母になっています。

[READ MORE...]
独占できない?
 前回の記事を読んでいただくと、

特許法第92条を『他社の特許』の『他社』側から

みると、特許を独占できないことになるのか
。」


 という疑問がわくかもしれません。例えば、自分の特許の下位概念に相当する発明を誰かが出願して、これが特許されると、通常実施権を認めなければならないのですから。残念ながらその通りです。私も「独占に実施できる」と書いてきましたが「独占できる」とは言っていません。

 これが商品化をお勧めしない第2の理由です。「やった!特許を酢得したぞ。これで独占できるから商品化すれば大もうけだ」と思ったら、他社がその下位概念発明の特許を取得し、通常実施権を認める羽目になる、という場合があるからです。

 しかも、その下位概念発明は、貴方の特許よりも優秀です。進歩性の意味から分かるように、貴方の発明の課題を解決しているはずですから。だから貴方もその下位概念発明を実施したくなるでしょう、おそらく。 こうした場合、貴方は下位概念発明の特許権者から通常実施権を半ば強制的に受けることができます(特許法第92条第2項、第4項)。でも、これでは大儲けどころではありません。

 特許事務所はこうしたことを説明したがりません。うっかりすると「なぁんだ、独占できないのか。特許なんて取っても仕方がない」と誤解されかねませんから。この補足で言っていることは、貴方が特許を取得していることが前提です。特許を取得していなければ、実施契約を結んでもらえなかったり歯牙にもかけられなかったりします。だから、特許を取る意味はあるのです。

 貴方が自分の特許を商品化せず、ロイヤリティをもらうだけにしておけば、上記のような問題は発生しません。何しろ目的は「独占(他社に実施させないこと)」ではなく「他社に実施させること」なのですから。



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。